合同会社の解散・清算の流れと必要な手続きを解説

合同会社(LLC)の解散は、会社の活動を終了し、法人格を消滅させるための重要な手続きです。適切な手続きを踏まないと、法的な責任が残ったり、税務上の問題が発生したりする可能性があります。

本記事では、合同会社の解散の流れを詳細に解説し、必要な書類や注意点についても紹介します。

1. 合同会社の解散とは?

合同会社の解散とは、会社の事業活動を停止し、最終的に法人格を消滅させることを指します。解散には、自発的な解散(任意解散)と、法的要因による解散(強制解散)の2種類があります。

(1)任意解散(自主的な解散)

以下のような理由で会社を解散するケースです。

  • 事業の継続が困難になり全社員(出資者)が合意して解散を決定した
  • 会社設立時の定款で定めた存続期間が満了した
  • 事業目的を達成した

(2)強制解散

以下のような場合、法律により会社が解散となることがあります。

  • 合同会社が破産した場合
  • 法令違反などにより裁判所から解散命令を受けた場合

 

ただし、実務的には全社員(出資者)が合意して自主的に解散するケースがほとんどです。

2. 合同会社解散の流れ

合同会社を解散するには、以下の手順を踏む必要があります。

解散の決定

合同会社の解散は、原則として総社員(出資者全員)の同意が必要です(会社法641条)。

この同意では、下記を決定します。

  1. いつ付で解散するのか
  2. 誰を清算人にするか

決めたら、総社員の同意書を作成しておきます。

なお、解散日は同意時から1か月以内の日で決める必要があり、解散日を半年後や1年後とした同意は無効となります。社員が複数いる、連絡が取りにくい等の理由で、数ヶ月前から同意を得ておくというやり方はできません。

実務上は、直近の月末付けで解散することが多いため、このような問題は起こり難いですが、専門家を介さずに進行する場合は注意が必要です。

ポイント

  • 解散日は1か月以内の日で決める必要がある。

以下では、会社・法人の廃業における解散日はいつがいいかについて解説しています。

https://houmupro.youbest-legal.com/archives/461

清算人の選任

合同会社が解散すると、残務処理を行うために「清算人」を選任する必要があります(会社法641条)。通常、代表社員が清算人になりますが、別の人を選ぶことも可能です。

ポイント

    • 清算人を選んだら「清算人就任登記」が必要
    • 清算人は会社の財産を整理し、債務を清算する責任を負う

会社解散時の清算人については下記で詳細を解説!

https://houmupro.youbest-legal.com/archives/525

解散登記の申請

解散が決まったら、管轄の法務局に「解散登記」を申請します。解散登記を行うことで、会社が解散したことが公的に認められます。

提出書類

  • 総社員の同意書
  • 就任承諾書
  • 解散登記申請書

申請期限

  • 解散決定日から2週間以内に申請(過ぎても申請は可能)

登録免許税

  • 39,000円(解散と清算人の登記)

解散の登記が完了すると、登記事項証明書の下に解散した旨の記載がされるようになります。

会社が解散したことを確認できる公的な書類は、登記事項証明書です。

そのため、解散後は登記事項証明書は税務署や年金事務所などへの提出で利用します。

3.解散に伴う税務手続き

合同会社を解散する際には、税務署や地方自治体にも届出を行う必要があります。

① 法人税・消費税の申告

解散日までの事業期間について、確定申告を行う必要があります

申告期限

  • 解散日から2か月以内

② 法人設立届出書の取り消し

  • 税務署・都道府県税事務所・市町村役場に「法人解散届出書」を提出

下記では会社廃業における登記と税務のスケジュールを合わせて解説しています。

https://houmupro.youbest-legal.com/archives/480

4.合同会社清算の流れ

清算人は、以下の手続きを進めます。

  • 債務の整理
    • 会社の借金や未払い金を精算する
  • 債権者への公告(官報公告)
    • 債権者に対し、会社の解散と債権申し出の公告を官報に掲載
    • 2か月以上の公告期間を設ける必要がある

会社解散における官報公告について解説

https://houmupro.youbest-legal.com/archives/115

  • 残余財産の分配
    • 債務をすべて清算した後、清算計算書を作成し、総社員の同意を得たら残った財産を社員(出資者)に分配

残余財産の分配について後述します。

⑤ 清算結了登記

清算が完了したら、最後に「清算結了登記」を管轄の法務局に申請し、法人格を正式に消滅させます。

提出書類

  • 総社員の同意書
  • 清算計算書
  • 清算結了登記申請書

申請期限

  • 清算手続き完了から2週間以内(過ぎても申請可能)

登録免許税

  • 2,000円

中略

清算結了の登記が完了すると上記のように閉鎖事項全部証明書を取得することができ、下欄には清算結了の旨が記載されます。

会社が閉鎖した事を証明する公的証明書となりますので、税務署や年金事務所、レンタルオフィスの解約などで必要となる場合があります。

5. 清算結了に伴う税務手続き

① 確定申告(法人税の申告)

清算が終了した場合、清算所得に対する法人税の確定申告を行う必要があります。清算所得とは、清算中に発生した利益を指し、通常の営業所得とは異なります。

具体的には、資産の売却や債務の免除、負債整理などによって発生する利益です。

【確定申告の内容】

  • 申告書の提出:法人税の申告書(税務署への提出)を提出する必要があります。
  • 申告期限:清算結了後、1ヶ月以内に確定申告書を提出することが求められます。
  • 税務署に提出する書類
    • 法人税の確定申告書
    • 清算期間の決算書類(資産表、損益計算書)
    • 清算所得に関する資料(資産売却額、負債の免除など)

    6. 残余財産の分配とは?

    先述のとおり、合同会社(LLC)が解散すると、会社の財産を清算し、最終的に残った財産(残余財産)を社員(出資者)に分配する必要があります。

    合同会社では、残余財産の分配方法は定款の定め社員間の合意に基づいて決定されます。

    残余財産分配の流れ

    残余財産の分配は、以下の手順で進められます。

     会社の財産を整理し、債務を精算

    • 会社が保有する財産(現金、売掛金、資産など)を整理します。
    • 会社に債務がある場合は、債権者に対して優先的に支払いを行う必要があります
    • 未払いの税金や社会保険料もここで支払います。

     官報公告による債権者保護手続き

    • 清算人は、債権者に対して公告(通常は官報に掲載)を行い、債権の申し出を求めます。
    • この公告を出した後、少なくとも2か月以上の期間を空ける必要があります(会社法499条)。

     残余財産の確定

    • 債務の支払いが完了した後、会社に残った資産(現金や資産)が残余財産となります。

     残余財産の分配

    • 定款に分配方法の規定がある場合
      • 例えば「出資比率に応じて分配する」と定められていれば、その比率で分配します。
    • 定款に特に規定がない場合
      • 会社法の規定(合同会社は出資比率に応じた分配が原則)に基づいて分配します(会社法606条)。

    分配方法の例

      • 例えば、2人の社員(出資者)が50万円ずつ出資して設立した会社で、残余財産が200万円残った場合、それぞれ100万円ずつ受け取ることになります。

    7. 残余財産の分配に関する注意点

    ① 債務の清算を最優先する

    • 会社の資産を分配する前に、すべての債務を清算することが必須です。
    • 債務を清算せずに分配を行うと、分配を受けた社員が会社の債務を弁済する責任を負う可能性があります(特に税金や社会保険料)。

    ② 税務上の注意点

    • 分配された財産が出資額を超える部分については、雑所得や配当所得として課税される可能性があります。
    • 会社が資産を売却して現金化する場合、譲渡益に対して法人税がかかる場合があります。

    ③ 会社の負債が多い場合(債務超過)

    • もし会社の負債が資産を上回っている場合、残余財産の分配は行えません。
    • この場合、社員(出資者)は追加で負担を求められることはありませんが、金融機関などから個人保証を求められている場合は、個人として責任を負う可能性があります。

    8. 合同会社の解散にかかる費用まとめ

    合同会社を解散する際にかかる主な費用は以下の通りです。

    項目 費用
    解散登記の登録免許税 30,000円
    清算結了登記の登録免許税 2,000円
    官報公告費用 約32,000円〜40,000円(文字数により変動)
    司法書士費用(必要に応じて) 60,000円~
    税理士費用(必要に応じて) 80,000円〜

    7. まとめ

    合同会社の解散手続きは複雑であり、税務や法的なリスクを避けるためにも、税理士や司法書士などの専門家に相談しながら進める方法もあります!