会社解散における官報公告とは?公告しないとどうなる?期間や費用について

会社の解散

解散の解散手続きを調べていくと、官報公告が必要なことが分かると思います。

ただ、官報公告って本当に必要なの?と考えるのではないでしょうか。
今回はそんな官報公告の実務を会社実務に詳しい司法書士が解説します。

この記事を書いた人
榎本亮冴(司法書士)

会社設立から役員変更、商号変更、事業目的変更などの商業登記全般に対応。
解散清算やM&Aに関する登記手続きも豊富な経験を活かしサポートします。法人のお客様に寄り添い、スムーズな手続きを実現します。

会社解散の官報公告とは?

まず、官報公告とは、政府が国民に会社の重要な行為まど広く知らせるために記載した紙面をいいます。

会社のこと以外にも政府が国民に広く知らせるための事項は官報公告に載ります。

会社の重要な行為として法令で官報掲載せよ定められているものには、会社の決算や合併、会社分割、資本金の額の減少、「解散」などがあります。

そして、解散公告は、必ず「官報」によって債権者に向けて行うことが義務付けられています。

そして、しなくていい場合の規定は現時点でありません。

会社法499条

清算株式会社は、第475条各号に掲げる場合に該当することとなった後、遅滞なく、当該清算株式会社の債権者に対し、一定の期間内にその債権を申し出るべき旨を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、当該期間は、2箇月を下ることができない。

2 前項の規定による公告には、当該債権者が当該期間内に申出をしないときは清算から除斥される旨を付記しなければならない。

解散時の官報公告は上場企業にも適用されるケースを想定しての規定です。不特定多数の債権者保護を図ることを目的としているのです。

ほとんど活動停止状態で、明らかに債権者ゼロのようなケースでも、残念ながら官報公告の義務があります。

確かに会社側の判断で官報公告しなくてもいい、という任意の規定では債権者にとって不利益になる可能性があります。

掲載を免除する客観的な判断基準を設けるのも難しいため、現状では一律掲載になっています。

 

 

官報公告は、債権者を保護する目的で行われますので、解散する会社に対して貸付している債権者は、この公告期間中に解散する会社に申し出する必要があります。

解散公告には主に以下の内容が記載されます。

掲載内容は法律で規定されていますので、多少文面が異なる場合もありますがほとんど同じになります。

・債権者に向けて解散する旨

・本店住所

・会社、法人名

・清算人の名前

債務の弁済の制限

解散する会社は官報公告掲載期間中は返済してはいけないことになっています。
これはすべての債権者を平等に取り扱うためですので、あの会社だけは取りえずもう返してしまおう、みたいなことはダメということです。
なお、公告掲載期間に債務不履行になっても、債務不履行責任を免れることができないとになっています。
つまり、返済期限などが迫ってしまい、官報公告の掲載期間中に弁済期が到来しても返済できないが、債務不履行の責任は発生するというわけです。
ただし、満了(2カ月間)を待っていられない場合は裁判所の許可を得て返済できるという規定もあります。
(債務の弁済の制限)
第五百条 清算株式会社は、前条第一項の期間内は、債務の弁済をすることができない。
この場合において、清算株式会社は、その債務の不履行によって生じた責任を免れることができない。
2 前項の規定にかかわらず、清算株式会社は、前条第一項の期間内であっても、裁判所の許可を得て、少額の債権、清算株式会社の財産につき存する担保権によって担保される債権その他これを弁済しても他の債権者を害するおそれがない債権に係る債務について、その弁済をすることができる。この場合において、当該許可の申立ては、清算人が二人以上あるときは、その全員の同意によってしなければならない。

解散における個別の催告とは?

条文では、「かつ、知れている債権者には各別にこれを催告しなければならない」とされています。官報だけでは見てない場合もあるので、分かっている債権者には個別に通知義務もあります

内容に決まりはありませんが、このような文書を送付すればいいでしょう。

送り方も特に規定はありません。

基本的に解散公告に記載した内容と同じことを個別に通知する形になります。

会社解散時の公告の期間は?

できるだけ会社を早く解散させたいという経営者の方は結構いるかと思います。ただ、官報公告は、2カ月間という決まりがありますので、これを短縮することはできません。

官報公告に掲載されると、掲載日から2カ月間継続して載ることになります。

 

解散を決めたら、最短でもそこから2カ月間待った後に清算結了して完了となります。

このため、解散から(厳密には清算人が就任してからですが通常解散と同時期)2カ月経っていないと、明らかに債権者保護が未了となり清算結了の登記が却下になります。

解散公告を考慮したスケジュールは?

例えば、8月末に解散とした場合、株主総会にて8月31日付けの解散の決議を行います。

官報公告は9月1日より掲載の手配をしておきます。

官報は申込から掲載まで10営業日ほどかかるため、8月中旬頃には申込手続きをしないと、9月1日からの掲載には間に合いません。

なお、解散公告は解散後遅滞なく実施する、となっていますので解散日に合わせて慌てて掲載せずとも問題はありません。

 

具体的な官報掲載期間は、民法の規定により初日不算入となり、初日はカウントされませんので掲載日の翌日から期間計算します。

更に官報は、行政機関の休日である、土曜・日曜・祝日・12月29日~1月3日は発行されません。

例えば、解散日を12月31日とした場合は、最短の掲載日は1月4日ということになります。

 

本事例では掲載日を9月1日(平日)としましょう。

その場合、初日不算入のため9月2日から起算します。

公告期間の2カ月満了日は11月1日となりますので、順調に進めば、11月2日から清算結了(最終的な会社閉鎖)が可能ということになります。

ただし、期間計算には、上記のとおり民法の初日不算入や官報の休刊日、他にも満了日が祝日の場合の規定があります。満了日が祝日の場合は、満了日が翌日にずれるという規定です。

期間の計算を正確に把握できればいいですが、専門家でもうっかりとスケジュールを誤る事があるくらいに、期間計算はややこしいなと個人的には思っています。

2カ月間ぴったりで清算結了しようとすると以外と間違いやすく、先述しましたが、解散日から2カ月経っていないと清算結了の登記が却下になります。

このため、清算結了は解散日から2カ月+10日くらい見ておくのが無難です。

なお、2カ月後に清算結了をしなくてはならないわけではありません。清算業務が終わっていない場合は清算結了に半年、一年とかかることもあります。

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官報公告の効果は?期間内に申し出なかった債権者

公告期間中に申し出の無かった債権者は除斥され、会社から弁済を受ける権利を失います。会社が清算して、最後に残余財産があれば、この範囲でしか弁済を受けることができなくなります。

ただしこれは、会社に知れていない債権者の場合です。

会社に知れている債権者には、申し出がなくとも除斥されませんので、全額返済する必要があります。

(清算からの除斥)
第五百三条 清算株式会社の債権者(知れている債権者を除く。)であって第四百九十九条第一項の期間内にその債権の申出をしなかったものは、清算から除斥される。
2 前項の規定により清算から除斥された債権者は、分配がされていない残余財産に対してのみ、弁済を請求することができる。
3 清算株式会社の残余財産を株主の一部に分配した場合には、当該株主の受けた分配と同一の割合の分配を当該株主以外の株主に対してするために必要な財産は、前項の残余財産から控除する。

 

官報公告の手順や費用

官報公告の掲載は、官報販売所に申し込みを行います。

官報申込みフォーム

入力フォームからの申し込み | 官報公告の申し込み | 全国官報販売協同組合
法定公告は信頼性も高く低廉な掲載料金の官報へ。入力フォームから官報公告を申し込みできる他、各種掲載申し込み書・ひな型のダウンロードも可能です。

こちらのフォームから、申し込むことができます。

掲載費用は、解散公告のケースでは最小の文字数で35,000円から40,000円程になるでしょう。

文面の内容(文字量と掲載時の行数)により数千円程度ですが費用に影響することがあります。

会社名が長い、本店住所が長い、株主総会の決議により解散した、など書かなくてもいいことを記載している場合は40,000円程度になる事もあります。

なお、申し込んでから直ぐに掲載されるわけではありません。申込から10日営業日で掲載となりますので、ある程度余裕を見て申し込みを行います。

官報公告をしないとどうなる?

よく質問にあるのが、官報公告はしなくてもいいのかという点です。これまで述べてきたとおり、解散時の官報公告は必須で省略できる規定はありません。

債権者がいないからしなくてもいいというような自主的な判断に任せず、法は一律に官報公告せよと定めているわけです。

一応罰則も定められており、100万円以下の過料の規定があります。

官報公告は省略可能?

掲載義務はある、というのは冒頭で解説したとおりです。ですが、未掲載でもほとんど問題となっていないとういうのが現状のようです。

手続き的にも、会社の合併や資本金の減少など、官報の掲載手続きを確認される(掲載しないと進まない)手続きと比較して、解散手続きでは、官報公告の実施調査はありませんので、省略しても手続きを進めることができてしまい、本当に債権者がいなければ実際に問題となることはまずないでしょう。

株式会社の場合は、毎年定時株主総会後の決算公告も義務となっていて、未実施の場合は100万円以下の過料という罰則規定があります。

しかしながら、実際には実施している企業はごく一部で、過料制度もほとんど機能していないそうです。

  • 官報で決算公告を実施している株式会社:1.8% (出典:東京商工リサーチ『2022年「官報」決算公告調査』)

解散公告の状況もほとんど同様のなのだろうと考えています。

60キロの制限道路を65キロで走行するようなもので、確かに65キロでの走行は法律違反ですが、忠実に守られてはいませんし取締りに合うことはまずない、という感じでしょうか。

まとめ

以上、解散公告は掲載する必要があるのか、という質問はよく頂きますが、上述のとおり現況未掲載のリスクは小さいものの、掲載義務となっている点についてはお伝えしています。

適切に廃業手続きを進めるようにしましょう。