会社・法人の廃業における解散日はいつがいい?【コラム】

今回は、解散日について会社実務に詳しい司法書士が解説します!

この記事は、株式会社、有限会社、合同会社、一般社団法人等の法人に共通する内容を扱います。

 

解散はまず何から始めればいいですか?というご質問をよく頂きます。

回答としては、まずは解散日の決定が必要です。

 

■そもそも解散日とは?

会社をたたむには下図のように主に

【①解散】→2カ月間経過→【②清算結了】の2つのステップが必要です。

 

解散日とは、これから会社の清算事務(返済や備品の整理など)を進めていく体制に移行する日を指します。この日をもって営業活動が停止しますが、会社そのものがすぐに消滅するわけではありません。

会社は【➁清算結了】のタイミングで閉鎖して消滅する、という流れとなっています。

いつでも直ぐに会社をバタンと閉鎖できるとなると、会社にお金を貸していた人や契約していた人が困ってしまいます。

ですので法律では、

・【①解散】というこれから清算事務を行う体制に移行するというステップ

・そこから最低2カ月以上経過後のすべて清算し終わった後の【②清算結了(閉鎖)】

というステップに分けて手続きをするように決まっているのです。

 

■解散日はいつがいいのか?

解散する日は株主総会や社員の決議で決定するのですが、1人会社や身内だけなどの場合は比較的自由に解散日を設定できると考えていいでしょう。

このため、解散日で一番多いケースは直近の月末付けです。

 

ですが、下記2つのポイントから解散日を検討するケースもよくあります。

営業活動の有無

・決算期

 

ポイント⑴営業活動の有無

 

【解散】とは上図のとおり、これから会社の清算をしてく体制に入るための手続きとなります。

解散した会社は、商品やサービスの提供といった営業活動はできません。

ですので、会社の解散日は、営業活動停止日以降の日で決める必要があります。

 

(ダメなケース)

✖例)5月31日に解散したが6月1日に商品・サービスが売れた。

 

(いいケース)

○例)4月20日に商品が売れたが5月31日に解散した。6月1日に商品代金を回収した。

(売掛金の回収は解散日以降でも行えます)

 

○例)5月31日に解散した。6月以降も役員報酬、給与を支払う。

(解散日以降も役員報酬を支出しつつ社会保険に加入することも可能です)

 

ポイント⑵決算月と税務

 

解散することにより、その会社の事業年度は終了し解散日が会社の期末になると決まっているため、会社の決算・税務申告に影響がでてきます。

 

  • 例1)決算期が8月31日の会社が、5月31日を解散日として解散した場合、1年経っていませんが5月31日までで締めて決算処理を行うことになります。

したがって決算期間を9月1日~5月31日迄として申告することになります。

 

  • 例2)決算期が8月31日の会社が、8月31日を解散日として解散した場合、決算期に特に変更はありません。

したがって決算期間を9月1日~8月31日迄として申告することになります。

 

  • 例3)決算期が8月31日の会社が、12月31日を解散日とした場合、12月31日で締めて決算処理を行う事になります。

したがって9月1日~12月31日までの申告を行います。

 

例3のように、決算期直後を解散日とすると、わずかな期間も事業年度となり確定申告が必要となります。

申告費用がかさむケースもあるため、これまでの決算期を考慮して解散日を決めましょう。

 

解散する日は株主総会や社員の決議で決定できますので、これらを考慮して決めるようにします。

解散日は遡れるのか?

解散日は遡れるのか?というご質問もよく頂きます。

 

例えば、2025年1月1日の時点で2022年1月31日を解散日として手続きできるか?というものです。

2022年1月31日以降に営業活動がなく、一人会社のようなケースであればそのような手続きは可能です。

 

この場合、2022年1月31日の時点で解散の決定はしていたので、これから手続きを進めていくという形になります。

 

ただし、登記は2週間以内に行うという決まりがあり、罰則規定(過料)があります。

2025年1月1日の時点で2022年1月31日を解散日として手続きする場合、登記の申請期限である2022年1月31日から3年前経過しているということになります。

 

実務的に半年程度ではほとんど問題になりませんが、数年間前の登記を遡って行うと、罰則規定の適用は捨てきれません。

実際にはほとんど罰則規定の適用はないものの、稀に10万円以下程度の過料になったケースも聞いています。(解散登記ではありませんが)

 

休眠会社でできるだけ前の日付で解散したいというニーズもありますが、上記のような懸念点も一応あるということはお伝えしています。

 

以上、解散日の設定における基本的なポイントを解説しました。解散を検討する際は、これらの点を考慮しながら適切な手続きを進めましょう。