今回は、会社の解散の流れについて、会社登記の実務に詳しい司法書士が分かりやすく解説していきます。
会社の廃業スケジュール
株式会社の廃業手続きでは、要点を大きく分けると画像のように①~④の「登記手続き」と「税務申告手続き」に分けることができます。
本事例では決算期12月の法人が5月31日付で解散する場合について見ていきましょう。
なお、実務上は①③を終わらせた後に②④を行うケースや、②①➃③の順で進めるケースもあり、会社の状況などに応じて進行することになります。
したがって、①②③④の順は一般的な進め方で、絶対に必要というわけではありません。
①解散登記
解散とは、会社としての活動を停止する決定を指します。ただし、解散後も会社自体は法的に存続しており、清算手続きが完了するまでその状態が続きます。
清算手続きとは、解散後に会社の資産や負債を整理するプロセスです。
具体的には、以下のような作業が含まれます。
・資産の売却や換金
・債務の支払い
・株主(社員)への残余財産の分配
図の①解散登記は会社を解散したタイミングで行うことになります。
解散登記の基本ステップ
会社の解散登記をするための基本的な流れを以下にまとめました。
(1) 株主総会での解散決議(総社員の同意)
解散を行うには、まず株主総会を開催し、解散を特別決議として承認する必要があります。特別決議の要件は以下の通りです。
- 株主の議決権の3分の2以上の賛成
- 合同会社の場合は総社員の同意
(2) 清算人の選任
解散決議と同時に、会社の清算業務を担当する「清算人」を選任します。通常、代表取締役がそのまま清算人になるケースが多いですが、外部の専門家を選任することも可能です。
(3) 解散登記の申請
解散決議後、2週間以内に管轄の法務局に解散登記を申請します。
必要な書類は以下の通りです。
- 定款
- 株主総会議事録(総社員の同意書、社員総会議事録)
- 解散登記申請書
- 清算人の就任承諾書
- 印鑑証明書
②税務申告
会社が解散した場合、事業年度開始の日(1月1日)から解散の日(5月31日)までの期間は1事業年度とみなされますので、この事業年度にかかる確定申告を行う必要があります。
事例では7月20日付で②税務申告を行っていますが、申告期限は8月1日(解散日の翌日6月1日から2カ月以内)となります。
③清算結了登記
先述のとおり、会社が解散したあとは清算事務手続きを行います。
契約の終了、債務の返済、売掛金の回収、在庫や不動産などの現金化を行い、会社の財産を整理していきます。
そして、債務をすべて返済仕切っても会社に資産が残った場合は、最後に株主の持ち株数に応じて現金などを分配することになります。
残余財産の分配は解散日から2カ月経過した後で可能です。
清算結了の承認
それまでの清算事務の内容について株主総会(社員総会)で承認の決議を行います。
この決議を終えたら清算結了です。
事例では8月20日に残余財産が確定し、株主総会で承認の決議(総社員の同意)により③清算結了となっています。
清算結了の登記手続きをする
上記の清算結了の承認決議を終えたら、法務局に清算結了の登記手続きをします。
- 解散登記の申請
清算結了決議後、2週間以内に管轄の法務局に解散登記を申請します。
必要な書類は以下の通りです。
- 株主総会議事録(総社員の同意書、社員総会議事録)
- 清算事務報告書(清算計算書など)
- 解散登記申請書
この登記が完了すると会社の登記事項が閉鎖され、会社が消滅したことが登記事項証明書(閉鎖)で確認することができます。
![]() 中略 |
④税務申告
清算事務が終了し、残余財産が確定したら、最後の確定申告を行います。
事業年度は、解散の日の翌日(6月1日)から残余財産が確定した日(8月20)までの期間となります。この事業年度にかかる確定申告を行う必要があります。
事例では8月30日付で④税務申告を行っていますが、申告期限は9月21日(余財産が確定した日の翌日8月21日から1か月以内)となります。
これにより会社の法人格が正式に消滅し、税務処理に関する手続きも完了です。
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