- 会社を設立したけど、何も活動していない
- 前に設立した会社が税金ばかりかかる
- 売上が下がってきたから個人事業に戻りたい
など、法人を設立したものの、このようなケースもあるもあると思います。
今回は、株式会社の解散から清算までの一連の手続きを、実務経験豊富な司法書士が分かりやすく解説します。
ちなみに、この記事では株式会社を中心に取り上げていますが、合同会社や有限会社、一般社団法人もおおむね手続きは同じです。
会社解散とは?
株式会社の廃業手続きは、大きく分けて「解散」と「清算」の2つの手続きからなっています。イメージ的には、会社を解散させて営業活動を終了したあと、債務の返済だったり、売掛金の回収をしたり、在庫や不動産などを現金化したりして、会社の財産を整理する清算事務していくことになります。
よく誤解しがちですが、解散というのは、「これから清算手続きにはいります」という基準日のようなもので、解散したら終わりというわけではありません。あくまでも、法人として活動は停止しますが、いまだに存続している状態です。
解散というと、解散時点で法人格が消滅するイメージを持ってしまいがちですが、現在完全閉鎖に向けて清算中です、という状態にするのが解散です。
会社が解散するケースはいくつかありますが、ほとんどの会社は決議により解散を行い、自主的に廃業している場合が多いでしょう。
会社の清算とは?
会社の清算とは、解散したあとの清算事務手続きを言います。契約の終了、債務の返済、売掛金の回収、在庫や不動産などの現金化を行い、会社の財産を整理していきます。
債務をすべて返済仕切っても会社に資産が残った場合は、最後に株主の持ち株数に応じて現金などを分配することになります。これを残余財産の分配といいます。
そして、清算した内容を株主総会で承認して、すべての手続きが完了です。これを清算結了といいます。
清算結了が会社の最終的な閉鎖を意味していす。
債務超過でも解散・清算できる?解散と破産の違い
債務超過というのは、保有している資産でもって、すべての負債を返済できない場合をいいます。よくあるご相談として、「公庫から借入が数百万円程残っていますが、解散できますか?」というものがあります。
返済不可の場合は、株主総会の決議で自主的に解散して、手続きを終えることはできません。
この場合は、破産手続きを行っていくことになります。破産手続きというのは、裁判所に申し立てて、破産管財人という人を選任してもらい、会社財産の整理をしてもらう手続きです。
この破産手続きを行うことで、すべて弁済できなくても、会社は消滅し、負債なども一緒に消滅することになります。
会社の借金が役員の貸付金であれば免除すればいいのですが、外部から借りている場合は、免除してもらうか完済するまで自主的に会社をたたむことはできないということです。
税金を滞納している場合の会社の解散清算
税金の滞納がある場合はどうでしょうか。これも借入と同様に、税金の滞納がある場合は、自主的に会社をたたんでしまうことはできないとされています。
一応、登記手続きだけ進めて清算結了(閉鎖)までこぎつけることはできますが、実質的に見て税金の滞納がある場合は、納付するまで税金は消滅しない扱いになるということです。
会社に残った財産があるなら、納税に当てるのが当然なので、残余財産の分配を行った清算人や、分配を受けた株主が第二次納税義務者として、本来追わない法人の納税義務を負うこととされています。
ただ、国税徴収法に、「清算人は分配又は引渡しをした財産の価額の限度において、残余財産の分配又は引渡しを受けた者はその受けた財産の価額の限度において、それぞれその責めに任ずる。」とあり、第二次納税義務を負うかは、残余財産の分配を行っていたことが前提にあることになります。
法人に差し押さえる財産がない場合は、未納のまま法人は消滅することになりそうですが、もはや管轄税務署の対応次第でしょう。
事前に税務署、都道府県税、市区町村への相談することで前向きなアドバイスをもらったというケースもちらほら聞いております。
法人住民税均等割はどうなる?
会社は存続しているだけで、最低でも年間7万円の法人住民税均等割が発生します。
意外にも数年間、法人住民税均等割を納めていない会社というのは多いものですが、この納付義務がどうなるかももはや管轄の都道府県税、市区町村の対応次第になります。
借金・税金が払えない場合はどうする?
法人が破産をすることにより借金・税金の支払い義務が消滅することになります。ただ、破産手続きは、裁判所や弁護士を通して行うこと基本であり、最低でも50万円くらいの費用を残しておかないと、結局代表者個人が身銭を切って破産費用を用意することになります。
資金が枯渇する前にできるだけ早めの判断が重要です。
会社解散清算の手続きの流れ・スケジュール
ここからは、廃業の主な流れ・手順です。
解散清算を行う場合は、基本的には下記の手続きで進めていきます。
- 営業活動終了
- 取引先への報告
- 株主総会で解散決議及び法務局で解散登記
- 解散日までの税務申告
- 年金事務所への資格喪失届
- 官報公告掲載及び会社債権者への通知
- 債権の取り立て、債務の返済、財産や契約関係の整理
- 株主への残余財産の分配
- 株主総会で清算結了の承認及び法務局で清算結了の登記
- 解散日翌日から清算結了日までの確定申告
完了。
従業員がいる場合には、他にハローワークでの手続きや雇用先の斡旋など業務も出てくると思います。
ここからは例えば、インターネット事業を行っていた株式会社甲(決算期8月、従業員なし)が、売上的にも個人成りしようとするケースをご紹介します。
①営業活動終了
会社を解散するには、まずはいつ解散するのか、解散日を決める必要があります。
会社が解散すると、それ以降は清算事務を行っていく必要がありますので営業活動ができません。
もちろん、解散するまでに受けていた業務などは解散後も完了するまで継続することになるのですが、営業活動の終了とは新規の契約を終えることを意味しています。
そのため、営業活動の状況も加味していつ解散するのか目途を決めていきましょう。
本事例では4月末に解散することとします。
| 株式会社甲は4月末で解散すると決めた。 |
②取引先への報告
これは法律上必要とはされていませんので、挨拶的なものになります。特に方法なども規定されていませんので任意で行う内容です。
③株主総会で解散決議及び法務局で解散登記
廃業を決めたら、株主総会で解散の決議を行います。この決議では、解散することを決議にするとともに、基本的に清算人の選任決議も行います。
会社は解散すると、取締役が全員自動的に退任し、代わりに清算人を1人以上就任させる必要があります。
この清算人は、会社の債務を弁済したり、売掛金を回収したりして、清算事務を行う役職です。
清算人は基本的に代表取締役が就任することが多いです。
解散の登記と登記費用
解散に関する株主総会の決議が完了したら、管轄の法務局に解散と清算人選任の登記を申請します。
このとき、登録免許税として39,000円を収入印紙で納める必要があります。
管轄の法務局は、会社の本店所在地により決まっています。渋谷区にあれば東京法務局渋谷出張所、新宿にあれば東京法務局新宿出張所などになります。「会社登記 管轄」などと調べて管轄法務局を調べてみましょう。
法務局に提出する書類は、株式会社の解散の場合は基本的に下記の書類が必要になります。
・登記申請書 (法務局又は郵便局で39,000円の収入印紙を購入し貼ります)
【添付書類】
・定款
・株主総会議事録(1号議案:解散決議、2号議案:清算人選任の決議)
・株主リスト
・清算人の就任承諾書
・印鑑届出書(清算人が会社印鑑を届出します)
・清算人個人の印鑑証明書
よくあるケースとしては、法人代表者がそのまま清算人になるわけですが、登記されている住所が現在の住所と違うときに別途手続きは必要かという点です。この点、新しく清算人という形で就任しますので、現在の住所で手続きすればよく、別途手続きは不要です。
また、取締役の任期が切れている場合、本来なら解散の前提として重任登記が必要ですが、解散するならあえて重任登記を挟まずに、清算人として選任してしまうことも可能です。
取締役や取締役会の登記は、解散すると同時に登記所で自動的に抹消されますので別途手続きは要りません。
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株式会社甲は4月末で解散するために、4月末に株主総会で解散と清算人を代表者甲とする決議を行う。 なお、株式会社甲の株主は代表者の甲と妻の乙のみのため、株主全員の同意により、株主総会の決議があったこととみなして開催はしなかった。 株式会社甲は解散の登記手続きを法務局で行った。 |
④税務署等へ確定申告と異動届を提出する(解散期)
会社が解散すると、事業年度が変わります。例えば、10月1日~9月末までが1事業年度の会社が、5月末に解散すると、この時点を一区切りとし、10月1日から翌年5月末までの7か月間の確定申告を行うことになります。
この期を解散期といいます。
解散の登記が完了したら、登記事項証明書と併せて、異動届(解散して事業年度が変わったこと記載)を税務署、都道府県税、市区町村に提出します。また、上記の通り、解散することで解散日の翌日から2カ月以内に、確定申告(通常事業年度の開始日から解散日までの解散期分)をする必要があります。
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株式会社甲(決算期8月)は4月末で解散したため、9月1日から翌年4月末までの8か月間の確定申告を税理士に依頼した また、代表者甲は個人事業とて継続していくため、税務署等に個人事業主の開業届を提出した。 |
⑤年金事務所への資格喪失届
役員報酬を出していない会社の場合は、社会保険に加入していないケースもありますが、社会保険に加入している場合は、年金事務所へ資格の喪失届を提出します。
ただし、会社の解散後も引き続き役員報酬を支給する場合や従業員に給与を出す場合は、解散後も引き続き社会保険に加入したままとなります。
従業員が退社し、役員報酬の支給が終えた段階で年金事務所へ資格喪失届を出しましょう。
| 株式会社甲は従業員がおらず解散後は役員報酬も出さないため、解散の登記手続き完了後に、年金事務所へ資格の喪失届を行った。 |
⑥官報公告と掲載費用
官報とは、会社の決算や合併、会社分割、株券廃止、解散などがあったことを記載している紙面です。官報販売所に申し込んで、自分の会社が解散したことを公告することを解散公告といいます。
掲載の費用は、3万5,000円から4万円程で、行数により若干幅があります。
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会社法499条 清算株式会社は、第475条各号に掲げる場合に該当することとなった後、遅滞なく、当該清算株式会社の債権者に対し、一定の期間内にその債権を申し出るべき旨を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、当該期間は、2箇月を下ることができない。 2 前項の規定による公告には、当該債権者が当該期間内に申出をしないときは清算から除斥される旨を付記しなければならない。 |
官報公告は会社の債権者に向けて、解散したことを知らせるために行いますが、おそらく見ているのは銀行くらいで普段目にすることはないかと思います。
また、知れている債権者には、各別にこれを催告せよとの規定もあり、官報公告だけでなく、個別に通知を送る必要もあります。
知れている債権者とは、名前と債権額が分かっている債権者のことです。
この公告は、解散後遅滞なく行いますが、条文のとおり2カ月間を下回ることはできないとあることから、解散から清算結了まで最低2カ月はかかります。
債権者がいない場合は、官報公告はしなくてもいいのか?という点についても解説しています。
会社解散における官報公告とは?公告しないとどうなる?期間や費用について
⑦清算事務(債権の取立、債務の返済、財産や契約関係の整理)
解散後は、これまで継続していた契約を終了させる、借金を返済する、売掛金や貸付金の回収をする、不動産や自動車などの会社の資産を売却するなどして名義変更を行うなどの清算事務を行っていきます。
解散時の主な資産の処分方法について記載します。
債権の取立と債務の返済
債権の取立とは、会社がお金を貸していたり、売掛金がある場合を指しています。これらがある場合は債権回収に努めます。
債務の返済とは会社がお金を借りている状況です。そのような場合は、債権者に返済しましょう。
ただし、債権者への返済は解散公告が完了する2カ月後でなければいけません。 詳しくは官報の別の記事を参照ください。
不動産
会社所有の不動産で、特に多いのは会社の代表者個人が買い取るケースではないでしょうか。
ここで注意すべきなのは、あまりにも安く代表者個人に引き渡すと、低廉譲渡として、高額な贈与税が発生するなど、税務上不利になる場合があるということです。最低でも固定資産評価額以上での売買が安全ではないかと思いますが、実際には税務専門家に確認してから行うようにしましょう。
また、解散前に譲渡するか、解散後に譲渡するか、税務上のメリットがないかも税務専門家に確認してみるといいでしょう。
不動産は会社名義となっているはずですから、買主名義に不動産の名義変更登記を行う必要があります。この際に、土地は課税価格×2%(又は1.5%)建物は、課税価格×2%(又は減税で0.4%)の登録免許税が発生します。
なお、会社を清算結了してしまうと会社の印鑑証明書の発行ができなくなります。
不動産の名義変更には会社の印鑑証明書を発行できる状態が必須となりますので、清算結了前には不動産を処分しましょう。
万が一、処分し忘れた不動産があった場合は、法務局で会社を一度復活させる手間がかかります。
自動車
自動車も会社名義になっているものを、代表者個人が買い取ることが多いと思います。名義変更は、管轄の運輸支局に必要書類を提出して行います。
自動車の名義変更にも基本的に会社の印鑑証明書の発行が必須かと思いますので、清算結了前には処分しましょう。
万が一、名義変更し忘れた自動車があった場合は、法務局で会社を一度復活させる手間がかかります。
その他財産
その他、在庫や会社所有とされるパソコン、事務用品など動産の処分を行います。
契約関係
本店の契約をしている場合も清算事務に不要であれば解約を進めましょう。なお、バーチャルオフィスなどの場合、清算結了の登記完了後でなければ解約できないケースもあります。
他にもリースしている物があれば、契約の解除や代表者が契約を引き継ぐなどの手続きが必要でしょう。
法人の銀行口座
会社の銀行口座はいつまでに解約しなければいけないなど決まっていません。通常は、解散後に債権債務を整理し、株主へ残余財産の分配が終わった段階で解約することになるでしょう。入出金の利用が終わったタイミングで問題ありません。
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株式会社甲ではインターネット事業がメインのため、不動産や自動車がなく、在庫も特にない。会社の経費として購入したパソコンは残余財産として代表者甲が引き継ぐことにした。 本店はレンタルオフィスを契約していたので解約手続きを進めた。 法人口座の解約はとりあえず最後の確定申告を税理士が行った後に進める事にした。 |
⑧残余財産の分配をする
解散公告から2カ月以上経過し、かつ、上記の清算事務を行い、会社に残った財産を残余財産といいます。この残余財産は、最後に株主に配当します。これを残余財産の分配といいます。この分配は、基本的には各株主の持株割合に応じて平等に配当を行います。例えば、株主2名でそれぞれ50%、会社に余った財産が200万円の場合、100万円ずつ配当します。
配当方法に決まりはありませんので、法人口座から各株主へ送金するなど適宜の方法で問題ありません。
なお、この残余財産はみなし配当に該当し、所得税の課税対象となる場合があります。
どのような場合に、課税対象となるかというと、株主が出資した金額よりも多く残余財産を分配するケースです。
例えば、資本金1,000万円の会社を解散して整理したところ、残余財産が1,500万円だったとします。株主に1500万円配当するわけですが、出資した当初より500万円上回っていますので、この上回っている金額が所得税の課税対象となります。税率は20.42%です。
そのような場合は、役員退職金をうまく活用し、株主資本と残余財産を近づけることで、みなし配当課税の節税します。
詳しくは税理士に相談しましょう。
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株式会社甲では残余財産が100万円であった。代表者甲と妻の出資割合が5:5であったため50万円ずつ配当した。 なお、残余財産が資本金(300万円)を下回ったため所得税の課税対象とはならなかった。 |
⑨清算結了の登記手続きと登記費用
解散日から2カ月経過し、前述の清算事務が終わり、残余財産の分配も終わったら、最後に清算事務の内容について株主総会で承認の決議を行います。この決議を終えたら清算結了です。
会社は清算結了の承認により消滅しますので、最終的な手続きといえます。
上記の清算結了の承認決議を終えたら、法務局に清算結了の登記手続きをします。
費用は登録免許税2,000円です。
この登記が完了すると会社の登記事項が閉鎖され、会社が消滅したことが閉鎖登記事項証明書で確認することができます。
清算結了の登記手続きも解散の登記を行った管轄の法務局に申請します。
申請に必要な書類は基本的に下記のもになります。
・登記申請書(法務局又は郵便局で2,000円の収入印紙を購入し貼ります)
【添付書面】
・株主総会議事録(1号議案:清算内容の承認)
・清算事務決算報告書
・株主リスト
なお、清算結了の登記は、解散してから(厳密には清算人が就任してから)2カ月を経過していないと、できません。これは、官報公告期間が最低2カ月となっているからです。
9月末に解散決議をし、10月1日からの官報公告した場合、清算結了できるのは12月2日以降となります。
また、官報公告は休日祝日には、掲載できず、更に、満了日が休日祝日の場合は、その翌日が満了日になるといった若干面倒な期間計算があります。
清算結了可能日を最短で設定する場合は、期間計算を間違えないように注意が必要です。
申請を誤ると補正対応など面倒ですので、少し余裕をもって清算結了日とした方がいいでしょう。
例えば、公告掲載日から2カ月間+10日後を清算結了日にするなどです。
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株式会社甲は4月末で解散し、7月15日時点で残余財産の分配を行った。また同日に株主総会で清算結了の決議を行った。 なお、株式会社甲の株主は代表者の甲と妻の乙のみのため、株主全員の同意により、株主総会の決議があったこととみなして開催はしなかった。 株式会社甲は清算結了の登記手続きを法務局で行った。 |
⑩税務署等へ確定申告と異動届を提出する(清算期)
清算結了すると、解散日の翌日から清算結了日までを清算期として、税務署などに確定申告を行います。併せて異動届を提出します。
異動届出は、閉鎖登記事項証明書と併せて税務署などに提出します。また、上記の通り、清算結了することで清算結了日の翌日から1カ月以内に、確定申告(解散日の翌日から清算結了日までの清算期分)をする必要があります。
一連の手続きを図にするとこのようなイメージになります。

| 株式会社甲は7月15日に清算結了をしたので、5月1日から7月15月までの確定申告(清算期)を税理士に依頼した。 |
清算資料の保存
清算人は、清算結了の登記から10年間、清算会社に関する帳簿や、事業・清算に関する重要な資料(帳簿資料)を保存する義務を負います。捨てずに保管しておきましょう。
これで、解散・清算手続きは完了です。


