会社解散時の清算人とは?その職務と責任をわかりやすく解説

会社を解散する際には「清算人(せいさんにん)」という役割が必要になります。しかし、清算人とは何をする人なのか、どんな責任があるのかを理解している方は意外と少ないかもしれません。

この記事では、清算人の役割や職務、責任について、会社登記に詳しい司法書士が初心者にも分かりやすく解説します。

清算人とは?

清算人とは、会社が解散した後に財産を整理し、債務を精算し、残った財産を株主に分配する役割を担う人のことです。会社が通常の営業を停止すると、その後は「清算手続き」に移行します。この清算を行うのが清算人です。

清算人は、通常、会社の代表取締役や取締役が就任しますが、株主総会の決議で外部の専門家(司法書士や弁護士など)が選任されることもあります。

また、会社の代表取締役や取締役がそのまま清算人になれない場合、会社とは関係のない家族などの方を代わりに選任する場合もあります。

清算人になるための条件は?

清算人になるためには、法律上の要件を満たす必要があります。主な条件は以下のとおりです。

  • 個人であること:合同会社を除き、法人は清算人になることができません。清算人は必ず自然人(個人)である必要があります。
  • 法律で禁じられていないこと:例えば、破産者や一定の犯罪歴がある人は清算人になることができません。
  • 株主総会または裁判所の選任を受けること:会社が自ら清算人を決める場合は、株主総会の決議が必要です。一方、裁判所が清算人を選任する場合もあります。
  • 清算業務を遂行する能力があること:財務・会計・法律の知識が求められるため、司法書士や弁護士などの専門家が選ばれることもあります。

清算人になる際の必要書類は?(登記手続き)

清算人に就任する際に必要な書類は下記です。

  • 清算人個人の印鑑証明書(3か月以内のもの)
  • 就任承諾書
  • 清算人を選任した株主総会議事録

清算人は解散する会社の代表者として、会社実印を法務局に登録する必要があり、その際に清算人個人の印鑑証明書が1通必要になります。

そして、解散の登記と同時に清算人就任の登記を行います。

登記が完了すると、登記事項証明書に「清算人〇〇」として名前(代表清算人の場合は名前と住所)が登記されます。

取締役はどうなる?

清算人は解散と同時に就任しますが、これと同時に取締役全員は退任します。

したがって解散後は取締役という役職はなくなり、清算人と監査役(いる場合)のみが会社の役員となります。

なお、登記の手続きで取締役の退任登記を行う必要はなく、清算人就任の登記を行うと自動的に取締役は抹消される仕組みとなっています。

下記は解散した会社の登記簿で、取締役・代表取締役に下線が引かれているのは退任して廃止(抹消)されたことを意味しています。

清算人の人数は?

清算人は最低1人いれば多くの会社の清算手続きにおいては十分です。

取締役(業務執行社員、理事)が複数いるケースでも、全員が清算人として就任する必要はなく、代表者だけが清算人になるというケースが比較的多いでしょう。

清算人の主な職務

清算人には、会社の財産を整理し、すべての債務を処理する責任があります。具体的な職務は以下のとおりです。

(1) 会社財産の把握と管理

清算人は、まず会社の財産と負債を確認します。会社の資産には現金、預金、不動産、在庫、売掛金などが含まれます。負債には借入金や未払いの請求書などがあります。

(2) 債務の弁済

会社が解散する際、未払いの債務があれば、清算人はそれを整理し、支払いを行う必要があります。債権者(会社にお金を貸している人)に対して通知を行い、請求があれば適切に対応します。

(3) 訴訟対応

清算中に会社が訴訟を抱えている場合、清算人がその対応を行います。場合によっては裁判所の判断を仰ぎながら進める必要があります。

(4) 財産の売却と分配

債務をすべて清算した後、残った財産を株主に分配します。例えば、会社が所有している不動産や備品を売却し、その売却代金を株主に分けることになります。

(5) 税務申告と清算結了登記

清算人は、税務申告を行い、法人税の確定申告を済ませる必要があります。その後、最終的に会社の「清算結了登記」を行い、会社の法人格を完全に消滅させます。

清算人の責任

清算人には、会社財産を適切に管理し、正しく清算を進める責任があります。もしも清算人が不正を行ったり、債権者に損害を与えたりした場合、法的責任を問われる可能性があります。

(1) 任務懈怠(けたい)責任

清算人がその職務を適切に行わなかった場合、債権者や株主から損害賠償請求を受けることがあります。例えば、財産を適切に管理せず損失を出した場合などが該当します。

(2) 詐害行為責任

清算人が不正行為を行い、債権者に損害を与えた場合、裁判所から損害賠償を命じられることがあります。例えば、特定の株主にだけ有利な分配を行った場合などです。

(3) 刑事責任

もし清算人が故意に財産を隠したり、虚偽の報告を行ったりした場合、刑事責任を問われることもあります。例えば、会社の資産を流用した場合、詐欺罪や横領罪に問われる可能性があります。

清算人を引き受ける際の注意点

清算人を引き受ける場合、以下の点に注意する必要があります。

  • 清算業務の流れを理解する:財産の整理、債務の精算、登記の完了まで一連の流れを把握することが重要です。
  • 適切な会計処理を行う:税務申告が必要になるため、会計処理を正しく行う必要があります。
  • 役員として名前を登記する:清算人に就任した場合、登記事項証明書に名前(代表清算人の場合は名前と住所)が記載されます。また官報公告を掲載した場合、清算人の名前も公告される形になります。

まとめ

清算人は、会社が解散した後の財産整理や債務の精算を行う重要な役割を担っていますので、慎重に進める必要があります。

なお、清算人に就任したからといって、より重い責任や手続きの負担を負うわけではないため、そこまで身構える必要はありません。取締役と基本的には同じ立場であると考えていいでしょう。

 

「会社解散時の清算人とは?その職務と責任をわかりやすく解説」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: 合同会社の解散・清算の流れと必要な手続きを解説 | 会社・法人の解散清算お役立ちコラム

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です