会社を解散し、清算手続きが完了すると法人格が消滅します。
しかし、会社の書類はすぐに破棄できるわけではなく、一定期間の保管義務があります。
ここでは、清算結了後に保管義務のある書類について、種類ごとに保管期間や注意点を詳しく解説します。
1. 会社の書類保管の基本ルール
- 法人が解散しても、書類の保管義務は消えない
- 税務・法務・労務などの書類は、それぞれ法律で保管期間が定められている
- 会社が存在しなくなっても、元代表者や清算人が書類の管理責任を負う
特に重要なポイント
- 税務関係の書類は「7年間」保管が必要(法人税法)
- 商法・会社法に関する書類は「10年間」保管が必要(会社法)
- 給与関係の書類は「5年間」保管が必要(労働基準法)
- 電子帳簿保存法の影響で、データでの保存も認められるが要件に注意
2. 書類の種類ごとの保管期間と義務者
(1) 税務関連の書類(保管期間:7年間)
税務署の調査に備えて、法人税や消費税に関する書類は7年間の保管が義務付けられています。
主な書類
- 法人税申告書・決算書(貸借対照表・損益計算書)
- 領収書・請求書・仕訳帳・総勘定元帳
- 消費税の申告書・計算書類
- 固定資産台帳・減価償却の計算資料
- 税務調査関連の書類(指摘事項・回答書など)
ポイント
- 税務調査は解散後も実施される可能性があるため、適切に保管する
- 紙の書類をスキャンして電子データで保存することも可能(電子帳簿保存法の要件に注意)
(2) 法務関連の書類(保管期間:10年間)
会社法の規定により、法人の存続に関する記録は10年間の保管義務があります。
主な書類
- 株主総会議事録(解散決議・清算結了決議)
- 定款・登記事項証明書(会社の基本情報)
- 株主名簿・出資者の記録
- 清算決算書・財産分配の記録
ポイント
- 清算結了後も、株主や債権者からの問い合わせがある可能性があるため、しっかり保管する
- 清算人(元代表者)が責任を持って管理する
(3) 労務関連の書類(保管期間:5年間)
労働基準法や雇用保険法により、従業員に関する書類の保管義務は5年間です。
主な書類
- 雇用契約書・労働条件通知書
- 給与台帳・源泉徴収簿
- 社会保険・厚生年金の記録(資格喪失届など)
- 労働保険の申告書類
ポイント
- 元従業員が退職後に「源泉徴収票の再発行」などを依頼することがあるため、すぐに対応できるように保管しておく
- 社会保険の関係書類は年金の確認に必要になることもある
(4) 契約・取引関連の書類(保管期間:5年~10年)
解散後も、取引先との契約に関するトラブルが発生する可能性があるため、契約書類は一定期間保管が必要です。
主な書類
- 取引先との契約書(賃貸契約・業務委託契約など) → 保管期間:10年
- 売掛金・買掛金に関する記録 → 保管期間:7年
- 銀行との融資契約書・借入返済記録 → 保管期間:10年
ポイント
- 未払いの債務や、契約解除後のトラブルに対応できるようにする
- 特に長期間のリース契約や保証契約などは慎重に扱う
(5) その他の書類(保管期間:適宜)
解散後も必要になる可能性があるため、以下の書類も適宜保管しておくと安心です。
主な書類
- 銀行口座の解約証明書 → 保管期間:5年
- 会社の印鑑証明書・廃止届 → 保管期間:5年
- ドメイン・商標の登録証 → 保管期間:契約終了後5年
ポイント
- 会社名義の銀行口座が正しく解約されたことを証明できるようにする
- 会社のWebサイトやメールアドレスの管理履歴も残しておくとよい
3. 書類の保管方法と管理のポイント
(1) 保管場所の確保
- 書類の量が多い場合は、レンタル倉庫やトランクルームを活用する
- 個人の自宅で保管する場合は、防湿・防虫対策をする
(2) 電子保存の活用(スキャナ保存)
- 電子帳簿保存法に対応したスキャン保存を利用すると、省スペースで管理可能
- ただし、保存要件(改ざん防止の仕組みなど)を満たしていないと無効になる
(3) 破棄する際の注意点
- 保管期間が過ぎた書類を破棄する際は、シュレッダーや溶解処理を行い、情報漏えいを防ぐ
- 特に契約書や個人情報が含まれる書類は慎重に処理する
電子帳簿保存法とは?
電子帳簿保存法(電帳法)は、紙での保存が義務付けられていた帳簿や書類を、一定のルールのもとで電子データとして保存できるようにする法律です。企業の業務効率化やペーパーレス化を促進するために制定されました。
1. 電子帳簿保存法の対象となる書類
電子帳簿保存法では、以下の3つの分類に分けられます。
(1) 電子帳簿等(会計ソフトなどで作成する帳簿類)
- 総勘定元帳
- 仕訳帳
- 貸借対照表・損益計算書
- 固定資産台帳 など
(2) スキャナ保存(紙で受け取った書類を電子化して保存)
- 請求書
- 領収書
- 契約書
- 納品書 など
(3) 電子取引データ(デジタルで受け取った書類)
- メールで受信した請求書・領収書
- クラウドサービスで受領した取引データ
- インターネットバンキングの取引明細 など
2. 電子保存する際の要件
電子データを正式な証拠として認めてもらうためには、改ざん防止や検索機能の確保といった一定の条件を満たす必要があります。
- 電子帳簿等:税務署の承認が不要になり、一定の保存要件を満たせば適法に保存可能
- スキャナ保存:スマホやスキャナで撮影・保存する際に「タイムスタンプ付与」などの要件がある
- 電子取引データ:電子メールやクラウドで受け取ったデータを、紙に印刷して保存するのではなく、電子データのまま保存することが義務化(2024年1月から義務化)
3. 電子帳簿保存法のメリット
- ペーパーレス化によるコスト削減(紙代・印刷代・保管スペースが不要)
- 業務の効率化(検索機能を使って素早くデータを確認可能)
- 税務調査の対応がスムーズ(電子データの方が管理しやすい)
4. 電子帳簿保存を導入する際の注意点
- データの改ざん防止対策をしっかり行う(タイムスタンプ・アクセス制御など)
- クラウドサービスを活用すると管理が簡単(会計ソフト・電子取引管理ツールなど)
- 電子データの保存要件を満たさないと認められないことがあるため注意
電子帳簿保存法は、企業の会計・経理業務のデジタル化を推進する法律で、2024年から電子取引データの電子保存が義務化されました。
導入することで業務の効率化やコスト削減につながるため、適切な管理体制を整えて活用することが重要です。
まとめ:解散後も書類の管理が重要
- 法人税・消費税の申告書類は7年間保管が必要
- 株主総会議事録・清算決算書は10年間保管が必要
- 労務関連の書類は5年間保管が必要(給与台帳・雇用契約など)
- 契約書類は5年~10年間保管しておくと安全
- 保管は清算人(元代表者)が責任を持ち、電子保存の活用も検討する
解散後も、税務調査や元従業員・取引先からの問い合わせに対応するために、書類の保管は慎重に行いましょう。