代表取締役や役員が 失業保険(雇用保険の基本手当)を受給できるか は大きなポイントになります。本記事では、会社をたたむ際の 失業保険との関係や注意点 を分かりやすく解説します。
①失業保険を受け取れる条件
基本的に、失業保険を受給するためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 雇用保険に加入していた(会社員として給与を受けていた場合など)
- 会社を辞めた(退職・解雇・倒産)後、就職の意思と能力がある
- 積極的に求職活動を行っている
この条件を満たせば、会社員であれば通常、失業保険を受給できます。しかし、会社の代表取締役や役員の場合は少し事情が異なります。
②会社の代表取締役や役員は失業保険を受け取れる?
代表取締役や役員は基本的に雇用保険の適用外 です。理由は、雇用される立場ではなく「会社の経営者」としてみなされるためです。そのため、以下のようなケースでは失業保険を受け取ることができません。
受給できないケース
会社を解散したが、代表取締役で雇用保険に入っていなかった場合
会社を清算中で、まだ法人が残っている場合
- 清算中の間は、法人がまだ存続しているため、ハローワークから 「あなたはまだ会社の代表者(清算人)であり、失業とはみなせない」 と判断されることがほとんどです。
- 会社が完全に消滅していないため、「経営者の立場が続いている」と見なされる
- 清算人として法人の手続きを進める役割があるため、「完全な無職」とは認められない
しかし、次のようなケースなら受給できる可能性があります。
受給できるケース
代表取締役を退任し、従業員として雇用されていた場合
- 会社で役員を辞任し、従業員として一定期間雇用され、雇用保険に加入していた場合は、失業保険を受け取れる可能性があります。
会社を完全に清算し、登記を抹消した場合
- 会社の清算結了登記を行い、法人格が消滅すれば「失業」と認められる可能性があります。
一時的に役員になっていたが、その後、一般従業員として雇用保険に加入していた場合
- 例えば、最初は役員でも後に従業員として働き、雇用保険に加入していれば、受給資格を得られます。
会社の事業が完全に停止しており、収入がない場合
- 会社の業務を完全に停止し、代表者としての報酬がゼロ であれば、「実質的に失業状態」として認められることがあります。
- ただし、ハローワークの審査は厳しく、「法人が残っている限り、失業とは言えない」と判断される可能性が高いです。
清算人を別の人に任せ、自身は会社との関係を断った場合
- 代表取締役が辞任し、別の人が清算人を務めている場合 は、失業として認められる可能性があります。
- ただし、辞任した後に雇用されていた実績(雇用保険加入期間)が必要です。
③会社の清算中に失業保険をもらうための対策
1. なるべく早く清算手続きを完了させる
- 清算手続きが長引くと、その間は「失業」と認められず、失業保険の受給が遅れます。
- 税務申告や債務整理を迅速に行い、できるだけ早く清算結了登記を完了させること が重要です。
2. 会社の清算人を別の人に任せる
- 自分が清算人のままだと、「法人の代表」と見なされるため、失業とは認められにくくなります。
- 別の人に清算人を任せて、自身は会社との関係を完全に断つ ことで、失業の状態と判断されやすくなります。
3. 清算中でもハローワークに相談する
-
- 失業保険の判断はケースバイケースです。清算中の状態でも、ハローワークに相談し、どのタイミングで申請できるか確認する ことをおすすめします。
④会社の清算と失業保険の関係 まとめ
状態 | 失業保険の受給可否 | 理由 |
---|---|---|
会社を清算中(清算人) | ❌ 受給不可 | 法人が存続しており、清算人としての責任がある |
会社の清算が完了(法人が消滅) | ⭕ 受給可能 | 会社が完全に消滅し、無職の状態と認められる |
清算人を別の人に変更し、役職を完全に辞任 | ⭕ 受給可能 | 会社と完全に関係を断ち、失業状態になる |
清算中だが、事業停止・収入ゼロ | △ ケースによる | 事業が完全に停止していれば認められる可能性あり |
⑤ まとめ
- 代表取締役・役員は基本的に失業保険を受給できないが、解散・清算が完了すれば受給できる可能性がある
- 役員ではなく従業員として雇用保険に加入していた場合は受給資格がある
- 法人格が残っている間は「失業」と見なされないため、清算結了登記を完了することが重要
会社をたたむ前に、雇用保険の加入状況や清算手続きを確認しておくことが大切です。