解散する会社の社会保険手続き完全ガイド

会社解散の社会保険手続き

会社を解散する際には、法務局での登記手続きだけでなく、社会保険に関する手続きも重要です。

社会保険の適切な手続きを行わないと、未納扱いになったり、余計な費用が発生する可能性があります。

本記事では、解散する会社が行うべき社会保険の手続きについて、必要な流れやスケジュール、注意点をわかりやすく解説します。

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スマハイ事務局
  1. 会社が社会保険の適用事業所であるか確認
  2. 社会保険の資格喪失手続きを行う
    1. 会社(法人)が行う手続き
      1. 手続きの流れ
        1. (1) 健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届の提出
        2. (2) 健康保険・厚生年金資格喪失届の提出
    2. (2) 役員・従業員が行う手続き
      1. 社会保険資格喪失届を提出しないとどうなる?
  3. 社会保険料の最終精算
  4. 清算人に役員報酬を支給している場合
    1. 社会保険の資格喪失時期について
      1. 社会保険の適用が継続される条件
      2. 清算結了後の手続き
      3. 役員報酬の支払いが止まった場合
  5. 雇用保険の手続き
      1. (1) 雇用保険適用事業所廃止届の提出
      2. (2) 雇用保険被保険者資格喪失届の提出
      3. (3) 雇用保険の離職票の交付
  6. 労災保険の手続き
      1. (1) 労働保険関係成立届の廃止届の提出
      2. (2) 労働保険概算・確定保険料申告書の提出
  7. 無保険状態になるとどうなる?
    1. ① 医療費が全額自己負担になる
      1. 通常の負担額(健康保険加入時)
      2. 無保険時の負担額
    2. ② さかのぼって国民健康保険に加入できる(が、保険料は発生)
      1. 手続きのポイント
    3. ③ 保険未加入期間の健康保険料は減免されない
    4. ④ 任意継続の申請期限を逃すと、国民健康保険しか選べない
    5. ⑤ 住宅ローン・クレジットカード審査に影響する可能性
    6. ⑥ 無保険状態を避けるための対策
        1. 会社を解散する場合の社会保険手続き
        2. 退職後の保険選択肢を確認する
        3. 手続きを忘れた場合はすぐに役所へ相談
  8. まとめ

会社が社会保険の適用事業所であるか確認

まず、自社が社会保険(健康保険・厚生年金保険)の適用事業所であるかを確認しましょう。

原則として、法人である会社は社会保険の加入が義務付けられています。

例外として役員報酬の支給がなく、従業員もいない場合は社会保険の加入していない場合もあります。

社会保険の資格喪失手続きを行う

会社(法人)が行う手続き

会社が解散する場合、「適用事業所全喪届」を提出して、会社の社会保険適用を終了させる必要があります。

また、すべての従業員の社会保険の資格喪失手続きも行います。

手続きの流れ

  1. 健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届(会社の社会保険の適用を終了)
  2. 健康保険・厚生年金保険資格喪失届(従業員・役員ごとに提出)
(1) 健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届の提出

会社が社会保険の適用事業所でなくなる場合、「健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届」を提出します。

  • 提出先:管轄の年金事務所
  • 提出期限:解散の日から5日以内
  • 添付書類:解散を証明する書類(解散登記簿謄本のコピー)

なお、解散登記簿謄本は解散日から2,3週間後に取得できるのが一般的であるため、提出期限である5日以内に提出できないことが通常です。

下記は健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届の記入例です。

日本年金機構HPから引用

(2) 健康保険・厚生年金資格喪失届の提出

従業員や役員の健康保険・厚生年金の資格喪失届を提出します。

  • 提出先:管轄の年金事務所
  • 提出期限:退職日の翌日から5日以内
  • 添付書類:健康保険被保険者証(従業員から回収)

日本年金機構HPから引用

資格喪失届が遅れると、健康保険の請求や未納が発生する可能性があるため、迅速に対応しましょう。

(2) 役員・従業員が行う手続き

資格を喪失すると、健康保険の切り替えが必要になります。
役員・従業員は以下のいずれかを選び、手続きを進めます。

選択肢 内容 手続き先
① 任意継続 退職後も最長2年間、会社の健康保険を継続 健康保険組合・協会けんぽ(20日以内に申請)
② 国民健康保険 自治体の国民健康保険に加入 市区町村役場
③ 家族の扶養に入る 配偶者などの健康保険の扶養になる 扶養者の勤務先

社会保険資格喪失届を提出しないとどうなる?

社会保険料を払い続けることになる可能性があります!

  • 会社が解散しても、手続きをしないと社会保険の資格が残り、保険料の請求が続く
  • 会社がなくなると未払い保険料が発生し、ペナルティが課される可能性も

社会保険料の最終精算

解散日までの社会保険料を正しく納付することが重要です。

  • 社会保険料は、前月分を翌月に納付するため、解散後も未納分がないか確認しましょう。
  • 滞納がある場合は、解散前に清算しておくことをおすすめします。
  • 解散後に保険料の支払いを忘れると、後々督促や延滞金が発生する可能性があるため、しっかりと管理しましょう。

清算人に役員報酬を支給している場合

清算人に役員報酬を支給している場合、会社が清算手続き中であり、事業が継続していると判断される場合は、社会保険の資格喪失届をすぐに提出する必要はありません。

清算人とは、清算会社の役員であり、原則として取締役が清算人へ就任します。

社会保険の資格喪失時期について

会社が解散しても、清算が終了するまでは法人格が存続します。その間、清算人に役員報酬を支給している場合、社会保険の適用事業所としての状態が続いているとみなされるため、社会保険の資格喪失届はまだ提出しなくても問題ありません。

ただし、以下の点に注意してください。

  1. 社会保険の適用が継続される条件

    • 清算人が役員報酬を受けている
    • 事業を完全に停止しておらず、会社が社会保険の適用事業所としての実態を持っている
  2. 清算結了後の手続き

    • 会社の清算が完了し、法人格が消滅した場合には、適用事業所としての資格がなくなるため、上述したように、速やかに「適用事業所全喪届」と「社会保険資格喪失届」を提出する必要があります。
  3. 役員報酬の支払いが止まった場合

    • 清算人に役員報酬を支給しなくなった時点で、社会保険の資格喪失の手続きを行いましょう。

雇用保険の手続き

次に、従業員を雇用していた場合、雇用保険の資格喪失手続きも必要です。

(1) 雇用保険適用事業所廃止届の提出

  • 提出先:管轄のハローワーク
  • 提出期限:事業廃止日から10日以内
  • 添付書類:解散登記簿謄本

(2) 雇用保険被保険者資格喪失届の提出

従業員が雇用保険の対象であった場合、その資格喪失届を提出します。

  • 提出期限:退職日の翌日から10日以内
  • 添付書類:雇用保険被保険者証

(3) 雇用保険の離職票の交付

従業員が失業保険を受ける場合、離職票の発行が必要です。

  • 提出先:ハローワーク
  • 提出期限:退職後すぐに
  • 添付書類:賃金台帳や出勤簿

離職票を従業員に適切に交付しないと、失業保険の給付に支障が出る可能性があるため、注意が必要です。

労災保険の手続き

次に、従業員を雇用していた場合、労災保険の手続きも行います。

(1) 労働保険関係成立届の廃止届の提出

  • 提出先:労働基準監督署
  • 提出期限:事業廃止後速やかに
  • 添付書類:解散登記簿謄本

(2) 労働保険概算・確定保険料申告書の提出

労災保険料の精算を行います。

  • 提出期限:事業廃止日から50日以内

 

無保険状態になるとどうなる?

無保険状態とは、健康保険に未加入の状態を指します。この状態が続くと、医療費の負担や行政手続き上の問題が発生するため、注意が必要です。

① 医療費が全額自己負担になる

健康保険に未加入だと、病院やクリニックでの診療費が全額自己負担になります。

通常の負担額(健康保険加入時)

  • 会社の社会保険・国民健康保険:3割負担(一般的な自己負担割合)
  • 高額療養費制度あり(一定額を超えた医療費は補助される)

無保険時の負担額

  • 100%自己負担(全額支払う必要がある)
  • 入院や手術の場合、数十万~数百万の医療費が発生する可能性
  • 高額療養費制度は適用されない

例:3割負担と無保険時の比較 

診療内容 健康保険加入(3割負担) 無保険(全額負担)
風邪で病院受診(5,000円) 1,500円 5,000円
レントゲン+MRI検査(30,000円) 9,000円 30,000円
盲腸の手術+入院(50万円) 15万円 50万円

② さかのぼって国民健康保険に加入できる(が、保険料は発生)

無保険状態が発覚した場合、役所で国民健康保険にさかのぼって加入できるケースがあります。

手続きのポイント

  • 市区町村役場に申請すれば、過去の資格喪失日までさかのぼって国保加入できる可能性がある
  • さかのぼった期間分の保険料をまとめて支払う必要がある(負担が大きくなる場合あり)
  • すでに支払った医療費は、後から国保に請求して一部払い戻しできるケースもある(要相談)

ただし、役所の判断によっては遡り加入を認めない場合もあるので、無保険にならないように注意が必要!

③ 保険未加入期間の健康保険料は減免されない

通常、健康保険に加入している場合、保険料を支払うことで保険の恩恵を受ける仕組みになっていますが、無保険の期間があると、その期間に対する保険料が免除されることはありません。

  • さかのぼって加入できた場合も、その間の保険料を後からまとめて支払う必要がある
  • 加入しなかった期間に発生した医療費は、保険適用されずに全額負担

つまり、無保険の期間があると、保険料も医療費も二重の負担になる可能性がある!

④ 任意継続の申請期限を逃すと、国民健康保険しか選べない

健康保険の「任意継続」は、退職後も最長2年間、会社の健康保険を継続できる制度です。
ただし、退職後20日以内に申請しないと利用できないため、これを逃すと国民健康保険への加入しか選択肢がなくなります。

国民健康保険と任意継続の違い

項目 任意継続 国民健康保険
加入期限 退職後20日以内に申請 いつでも加入可能
保険料 固定額(在職時の標準報酬月額による) 前年の所得に応じて変動
保険料の負担 全額自己負担(会社負担なし) 全額自己負担
高額療養費制度 あり あり

→ 任意継続の方が保険料が安くなるケースも多いため、無保険状態を避けるためにも早めに決断するのが重要!

⑤ 住宅ローン・クレジットカード審査に影響する可能性

社会保険に加入していることは、社会的信用の一部として見なされることが多いです。
そのため、無保険状態が続くと以下のような影響が出る可能性があります。

無保険状態の影響

  • 住宅ローンの審査に影響(健康保険未加入だと収入が不安定と判断されることがある)
  • クレジットカードの審査が厳しくなる場合がある(信用情報に間接的な影響を与える可能性)

⑥ 無保険状態を避けるための対策

絶対に無保険状態を作らないために、以下の手続きを速やかに行うことが重要!

会社を解散する場合の社会保険手続き
  • すぐに国民健康保険 or 任意継続の手続きを行う(無保険期間を作らない)
  • 解散後すぐに役所に相談し、国保の切り替えを確認する
退職後の保険選択肢を確認する
  • 退職前に「任意継続にするか、国保にするか」を決める
  • 退職後20日以内なら、任意継続の申請が可能
手続きを忘れた場合はすぐに役所へ相談
  • 国保への遡り加入が可能か確認する
  • 未払いの健康保険料について分割払いの相談をする

まとめ

会社の解散に伴う社会保険の手続きは多岐にわたりますが、ポイントを押さえてスケジュール通りに進めればスムーズに完了できます。

特に、健康保険・厚生年金、雇用保険、労災保険の手続きを漏れなく行うことが重要です。しっかり準備し、適切な手続きを進めましょう。

このような手続きを事前に把握し、適切に対応することで、スムーズな会社解散を実現できます。不明点がある場合は、社会保険労務士や司法書士に相談するのも良いでしょう。